有明バッティングセンター【前編】
(しばらく、体を動かして無かったからちょうどいい。浩二に付き合いがてら、
トレーニングと行くか。)
会見前に、時速160kmまで出るように調整した4号機に向かい、バットを握
り締めた。投球制御盤に新しく配置された「高速シンカー」とかかれたボタンを
押す。早大野球部に進学を決めた、安藤健太の決め球だ。
(この球を攻略できねば、おれに将来はない。)
そういう思いで、4号機の調整を行ってきたのだ。
カウンターの電光掲示板がカウントダウンを始める。
(5,4,3,2,1)
「バシュッ」
投球口からものすごい勢いで放たれたボールに俺の目がロックオンした。
「カキーン」
1週間のブランクがあったが、幸い感覚は衰えていない。
「ふえー!」
一眼レフカメラを構えていた浩二が変な叫びを上げた。
「このシャッタースピードでも、ヘッドのスピードが速すぎてぶれちゃうっすね!
社長、もう一回お願いします。」
(へいへい、言われなくてもやりますよ。こっちはトレーニングのつもりなんだ
から。)
苦笑しながら、バットを構えた。
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作品名:有明バッティングセンター【前編】 作家名:ohmysky