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有明バッティングセンター【前編】

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「それで、このTシャツ、センター内で販売すれば、売れると思ったんで、100
着、発注しておきました。」

「おいおい、その金、どうしたんだ?」

おれが聞くと、

「センターに請求回しときました。必要経費ってことでお願いします。」

「そんな事できるのか」

「当たり前じゃないっすか、今をときめく有明バッティングセンターっすよ、僕
もテレビで顔が売れちゃいましたしね。」

得意げにそう言った。さすが商売人のせがれ、まだ高校生なのになかなかやるじゃ
ないか、それにしても、カップ麺何個分の出費をしたことやら。当分タダ働きし
てもらうぜ。

「そんな事より、早く記者会見の時に着ていたユニフォームに着替えてきて下さいよ。」

と浩二が急かすので、なにをするのかと思いつつ、まぁ支配人兼マネージャのご
指示に従いましょうということで、管理室にもどり、ユニフォームに着替えて戻
ってきた。

「4号機を使いましょう。」

そう言って、浩二は4号機の電源を入れた。俺の、インパクトの瞬間を写真に撮
り、サインを入れて販売するんだとか。おれが、安藤健太に使った手を俺自身に
使う気でいるらしい。会社の収益に貢献。すばらしい社員だ。1週間ぶりにバッ
トを握り、一連の準備運動を終えた俺は、これからプロとしてやって行くという
気負いもあってか、自然と気合が入って行った。