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有明バッティングセンター【前編】

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「お名前はなんとおっしゃいますか?」

との問いに、

「私は、西大1校野球部の3年生で、木村浩二と申します。卒業後は有明氏の後
任として当校のバッティングコーチに就任し、当センターに就職が内定しており
ます。」

と大見栄を切った。自転車をこぎならが考えていた文句をここぞとばかり披露し
たのだ。レポーターは何かを思い出そうとでもするように、目を細め、しばらく
遠くを見つめたあと、ふいに

「あっ、ああ、あのキャッチャーの木村選手じゃないですか、思い出しました。
阪神ダメで残念でしたね。でも、ここに就職することになったんですか。よかっ
たじゃない。」

と、喜んでくれた。自分を自分として認識してもらった事に浩二は大きな喜びを
感じた。記憶も新しい、今夏の高校野球優勝校のレギュラーで、早大に進学を決
めたエース安藤と並ぶスラッガーの浩二もそこそこの有名人ではあった。
もう、忘れ掛けられていたが・・・・・。

「ちょっと、カメラさん、こっちこっち、いい子がいたわよ。インタビューする
から回して。」

念入りにピッチングマシーンのディテールをカメラに収めていたクルーを招集し
た。それにつられて、何事かと、他局のクルーも浩二の周りに集まり始め、さな
がら、記者会見の様相を呈し始めていた。