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有明バッティングセンター【前編】

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(商売上がったりだぜ。)

このまま、センターをオープンしても、おおよそ、見物人と取材の対応で金にな
らない事は火を見るより明らかだった。

利欲のために心を動かさない、美しい心・・・

(そんな心になるために十分なお金が今の俺には必要なのだよ。クレマチスちゃん。)

そうつぶやきながら、鉢植えのクレマチスの花をやさしく撫でるのだった。ふと、
テーブルの上の携帯電話に目をやると、ピカピカと点滅しているのが分かった。

(エレーナからか?)

ちょっとうきうきした気分になり、いそいそと携帯を取り、着信履歴に目をやった。

「木村浩二」

(なーんだ、浩二か。)

菜摘にふられ、阪神にふられ、俺の後釜として西大1校野球部のバッティングコ
ーチに就任した、脳天気野郎の浩二からだった。そういえば、エレーナから携帯
の電話番号を聞かされてないし、教えてもいない。したがって、俺の着信履歴に
エレーナの名前が出てくる訳がないのだ。半ばがっかりしたものの、浩二のその
後も気になっていたので、電話を掛けて見る事にした。

「トゥルルルル、トゥルルルル」

「もしもし、浩二か。」

「あっ、コーチ!、いや、有明さん。すごいっすねえ! 朝のテレビ見ましたよ。」

興奮気味に浩二が言った。

「朝の番組って?」

なんのことやら分からない。

「あれ? 見てないんっすか? 記者会見と公開バッティング練習の様子がどこの
チャンネルでもやっていて、まるで年末のゆく年くる年みたいだったっすよ。」

そういえば、起きてからテレビも新聞も見ていなかった。