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有明バッティングセンター【前編】

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疲れた。
眠い。とにかく眠い。

深夜2時に帰宅した俺は、ユニフォームを着替えることも出来ず、ベッドに倒れ
こんだ。公開バッティング練習後、ふらふらになった俺は球団フロント陣からの
夜の誘いを丁重に断り、エレーナに付き添われ車で元来た道を帰った。車中でエ
レーナがうれしそうな顔で何か囁いていたのを覚えているが、その内容について
は全然記憶に無いほど、朦朧としていた。ただ、耳元で囁くエレーナの吐息がと
ても心地良かった事だけは覚えている。

「お疲れ様でした。詳しいことは後日連絡します。」

エレーナがそう言い残し、玄関前で踵を返した。ベッドまで連れて行って介抱し
てくれることを朦朧とする頭の片隅で期待していたが、それに反してエレーナは
つれなかった。

(あれは、夢か、妄想だったのか・・・・)

そんなことを考えながら、深い眠りに落ちていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

どれ程眠っただろうか。
夢を見ることも無く、爆睡した俺は、時計に目をやった。

2時30分。

(まだ、30分しか寝てないのか?)

しかし、窓からはカーテン越しに木漏れ日が凛として咲くクレマチスに振り注い
でいた。花言葉は「高潔」。利欲のために心を動かさない、美しい心。
そんな花言葉に心惹かれ、鉢植えを買って育てていたのだ。
無いものねだりといったところだろうか・・・・・

(ん?)

目覚まし時計のデジタル表示を良く見ると左側に「PM」と表示されている。12
時間以上爆睡していた事になる。こんなに眠ったのな何年振りだろう。外が、や
けにガヤガヤ騒がしい。またぞろ、野次馬や報道陣が詰め掛けているらしい。俺
は布団を跳ね除け、熱いシャワーを浴び、髭を剃って、カーテンの隙間から外の
様子を窺いながら、お気に入りのクレマチスにたっぷり水をやった。