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有明バッティングセンター【前編】

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ロッカールームのベンチに腰を下ろすと、俺は「ふーっ」と深いため息を付いた。

「ダメだ、全然見えない、体も動かない。」

膝がまだがくがくと震えている。

「なによ、情けない。いつものあの減らず口はどこに行ったの? あの時も自身満
々で、優勝トロフィーをプレゼントするなんて言って出かけたくせに。・・・・
うそつき!!」

(え?)

見ると、エレーナが大きな瞳に涙を一杯溜め、拳を振り上げながら向かってきた。

「ちょっ、ちょっと、エレーナ」

避ける間もなくエレーナは俺の胸に飛び込んで来た。

「ばか、なにも言わずに逝ってしまうなんて。卑怯よ。」

なんの事だかまったく分からない。
思わずその震える肩をぎゅっと抱きしめた。

つかの間の沈黙。

突然、顔を上げたエレーナは半ば強引に俺の顔に彼女の顔を近づけた。
唇と唇が触れ合い、強烈にお互いを求めあった。

(メデューサの涙。)

俺の呪いが解けて行く。
膝の震えがとまり、体に力が甦ってきた。

「ご、ごめんなさい、わたし・・」
急に我に返り、体を離したエレーナの肩を両手で掴み、
今度は、優しくキスをした。

「話は後だ、エレーナ、完全復活だぜ。いくぞ!」

まばゆい春の日の風のように爽やかな笑顔を残して、意気揚々とロッカールーム
を出て行く一郎をまぶしそうに見つめるエレーナであった。