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有明バッティングセンター【前編】

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俺は完全にパニックに陥ってしまった。

「その結果が、今後のあなたと、私たち球団の運命を左右する事になるでしょう。」

エレーナの行ったその言葉が頭の中をぐるぐると回っていた。カメラマンがここ
ぞとばかり、呆然とする俺にフラッシュを浴びせまくった。このままこの場を逃
げ出してしまいたい衝動に駆られたその時、エレーナが報道陣の前に立ち、口火
を切った。

「みなさん、有明選手は本日5時間も掛けて会場まで移動し、今回の公開バッティ
ングについても知らされておりませんでした。ウォーミングアップが不足してお
り、少々時間を頂きたいと思います。1時間後に再度練習を再開致しますので、
ご了承願います。」

記者たちは、原稿をまとめるため、記者控え室に戻っていった。

「有明一郎、とんだド素人。 東京フライヤーズはこの顛末の責任をどう取るのか?」

「地に堕ちたプロ野球の威信。球団の軽はずみな行動の責任を問う声が殺到。」

そんな新聞の見出しが俺の脳裏をよぎった。

「行きましょ。」

エレーナが俺の背中に軽く手を回し、ベンチ裏のロッカールームへと向かった。