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有明バッティングセンター【前編】

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・・・その頃、安藤健太は早田大学のキャンパスに一人立っていた。
スポーツ特待生の推薦入学願書を持って。

「ついでに早大野球部を見学して来い」

との校長の言葉と早大監督の好意により、早大野球部の練習場へ向かおうとして
いた。すれちがう女子大生が長身でイケメンの彼を見つけ、

「あれ、西大1校の安藤健太じゃない?」

と囁き合い、ついには、キャーキャーと黄色い悲鳴の渦に彼を巻き込んでいった。

そんな様子を遠くから見つめる一人の少女。
同じく早田大学医学部受験を控えている元マネージャー、坂井菜摘がそこにいた。
医学部の講義が聴講できるキャンパス体験プログラムに参加していたのである。

彼女は追い出しコンパのあと、健太から「早大に行ってもマネージャーとしてサ
ポートして欲しい」と告げられたが、「マネージャーとして」と言った彼の言葉
にその真意を計りかねていた。あの夜、両親が長期旅行で不在な彼の家へ行き、
将来の夢を語りながら、楽しい思い出にも浸り、幸せな時間を一緒に過ごしてい
た時に言われた一言である。

突然真剣な眼差しで彼女を見つめ、顔を近づけてくる健太の唇を両目を硬く閉じ
て受け入れた。強引に彼女の手を引く彼に身をまかせ、そのまま何もかも捧げて
しまいたい衝動に駆られた彼女だが、

「・・・だ、だめ。」

かろうじて踏みとどまった。彼女にとって初めての経験であり、とまどいもあった
が、その一言が心のどこかに引っかかっていた事がその衝動を抑制したのだと冷静
に分析していた。