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有明バッティングセンター【前編】

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携帯電話を取り出し、健太にメールを送った。

 健ちゃん。知ってる?
 有明コーチね、フライヤーズにドラフト1位でDHに指名されたのよ。
 プロに入ったら、健ちゃんの強敵になるね。
 頑張って練習してね。
 私は、健ちゃんのこと、信じてるよ!
 健ちゃんなら、有明コーチを倒せるって。
 今まで通り、見守ってあげるね。

黄色い悲鳴に囲まれ、苦笑していた健太の携帯が鳴った。それを遠くから見つめ
る菜摘。健太の顔が固まった。きょろきょろと周りを見渡す健太。遠くにたたず
む菜摘の姿を見つけると、黄色い悲鳴を振り切って全速力で駆け寄った。

「なっちゃん。来てたの。メールの事、本当?」

菜摘は、有明がドラフト1位に指名された事を言っているのか、自分が彼のこと
を信じていると言った事に対して聞いているのか図りかねた様子でうなずいた。

「俺、全然知らなかったよ。コーチがドラフト指名されたなんて。ずっと一緒に
練習してきたけど、俺、あの人だけは敵に回したくないと思っていたんだ。ドラ
フト1位でDHだって? こりゃおもしろくなってきた! 俺も4年間みっちり鍛え
ないとな。」

屈託なく笑う健太。

「なっちゃん、マネージャー、頼むよ! な!」

ポンと菜摘の頭に手を載せた。
菜摘は笑えなかった、悲しそうな目をして健太を見つめるだけだった。

「それじゃ、私、講義あるから。」

ぽかん、とする健太をあとに、菜摘は講義室へ向かって踵を返した。

「ブーッ、ブーッ、ブーッ」

講義の最中、マナーモードに設定していた菜摘の携帯が震えた。
メールが1件、健太からだ。

 なっちゃん。あの夜、なっちゃんに大事なことを
 言い忘れてました。ごめんなさい。
 俺は、なっちゃんの事、愛しています。
 ずっと死ぬまで一緒に居たいと思っています。
 はずかしくて、マネージャーになって欲しいなんて言ったけど、
 本当はこの事が伝えたかったんだよ。
 ごめんね。なっちゃん。

黒板の字がゆらゆら揺れて、ついには何も読めなくなってしまった。
震えるほど、今すぐ健太に会いたい衝動を抑え、うつむいて、

「・・・ばか」

つぶやく菜摘だった。