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有明バッティングセンター【前編】

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「ブーッ、ブーッ、ブーッ」
また電話だ、今度は「西脇大悟」と表示されていた。
西大1校野球部監督様である。33歳と俺より若いが、今のところバッティング
コーチである俺の上司である。

「・・・もしもし」

「いやーー。コーチ!! 凄いでんなぁ、びっくりしましたわぁ! 浩二のことが
気になってドラフト見とったら、まぁ。まさかコーチが!! 世の中わかりまへん
なぁ!」

(おめぇ、どこの生まれだよ。)

そういえば、俺も浩二の事が気になっていたが、自分が指名されたことですっかり
忘れていたのを思い出した。

「そういえば監督、浩二はどうなったんですか?」

「さっぱりわやですわ。期待していた阪神からも結局指名なく、他の球団からも
無しの礫で、かわいそうに浩二、部室でないとりましてん。せやからわて、言う
たりましてん。ええか、人生七転び八起きやでってね。」

(・・・・だからおめぇ、どこの生まれだよ。)

「どうせコーチ、プロの道進みはんのやろ。せやったらバッティングコーチ
できひんようになりますやんか。せやったら浩二にやらしたろかいな思いま
してん。このまま実家の酒屋継いでもうてもおもんないしねぇ。」

「監督、聞こう聞こうと思ってたけど、お生まれはどちらですか?」

とうとう聞いてしまった。

「北海道ですねん。」

プロ野球時代に阪神で大阪弁まねして覚えたと思うけど、とにかくこの人の言葉
はひどい。

「そうでおますか?」

・・・思わずつられてしまった。
いやいや、そげんこつゆうとる場合やない、いや、そんなことを言ってる場合で
はない。