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有明バッティングセンター【前編】

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「トゥルルル、トゥルルル・・・ただ今、電話に出ることが出来ません。
ピーッという発信音の後に・・」

くそっ・・もう1回。

「トゥルルル、トゥルルル・・・ただ今、電話に出ることが・・・」

おいおい、安っさんどうした?電話に出てくれよ。
その後、5分おきに数回電話してみたが、いずれも着信拒否で、頭にきた俺は
ビールをやけ呑みし、ふて寝してしまった。

「ブーッ、ブーッ、ブーッ」

どの位寝ていただろうか、テーブルの上に放って置いた携帯が鳴っていた。登録
したばかりの「安田英男」の文字が浮かんでいる。俺は、電話に出るなりまくし
立てた。

「安っさん、どうしてくれんのよ! 収拾つかんよ、これ!!」

「ごめんごめん、着信拒否にしとったわ。恭子ちゃんから電話が来て一郎くんの
電話番号教えてもらったのよ。こっちもマスコミの電話がひどくって、こんなに
反響あるとは思わなんだ。」

悪びれる様子もない。むしろ嬉しそうな声であった。

「冗談でドラフト指名されたらって言ったけど、それ本気にしちゃった訳?」

「はい、それおもしろいって思ったもんだから。フロントに話したら乗り気で
ねぇ。一郎くん、これを機会に一花咲かせてよ。」

まったくもって無責任なものである。

「もし、全然打てなかったらどうなる訳? 各方面からバッシングされて、外歩け
なくなっちゃうよ。」

「だいじょぶ、だいじょぶ、一郎君なら問題ないって。こう見えてもスカウトマン
人生30年の私の目に狂いはありませんよ。そうそう、明後日、記者会見やるから
迎えの者を朝8時にそちらに送ります。その時にユニフォームを持たせるからそれ
を着て会場に来てくださいね。じゃあ、何かと多忙なのでよろしく。」

「プー、プー、プー・・・」

ありゃ、切りやがった。
やだねー、年寄りは。自分の言いたいことだけ言って切りやがる。
しかも明後日って、まだ俺はやるともやらないとも言ってないのに・・・・
もう、なるようになれ!!!