有明バッティングセンター【前編】
指名が進んで行き、実業団野球のエースやら、大学、高校野球の有名選手が次々と
モニターに名を連ねていった。早朝からの悪戦苦闘とその後のビールの酔いが手伝
ってか、俺は半ばうとうとしながらこの様子を見ていた。
阪神ライダーズの指名順番が巡ってきた。
「一巡目、阪神ライダーズ、保坂直樹、投手、GL学園高校」
アナウンスが会場に響き、保坂直樹の顔写真がモニターに映し出された。
(おっと、浩二残念!! やっぱり華のある投手を指名するよなぁ。)
阪神入団希望の浩二は二巡目以降に望みを繋ぐ事となった。
次に東京フライヤーズの指名順番だ。
(安っさん、最後の花道にどんな奴を引っ張って来たんだろう。「お楽しみに」
なんて言っていたが、あの酔いどれ親父、どうせろくな奴を指名しないだろう。
なにせ、あらかたの有名処は既にほとんどの球団で指名されたからなぁ。指名が
かち合っても、フライヤーズ監督の原口はくじ運の弱さは有名だし、どうせ取れ
ねぇんだろうなぁ。)
横になり、3缶目の缶ビールを飲みながらうとうととそんなことを考えていた。
「一巡目、東京フライヤーズ、有明一郎、DH、有明バッティングセンター」
アナウンスが会場に響いた。
(へっ?)
俺は耳を疑った。今、俺の名前が呼ばれた様な気がしたからだ。
眠い目をこじ開け、テレビの画面を見ると、そこにはなんと自分の顔写真がで
かでかと映し出されているではないか?
(へっ? どういうこと?)
作品名:有明バッティングセンター【前編】 作家名:ohmysky