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有明バッティングセンター【前編】

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「東京フライヤーズが前代未聞のDHドラフト1位指名を行いました! 驚きです!
それにしてもこの有明一郎という選手、手元に資料がありませんが、一体どういう
選手なのでしょうか!また、所属チームである有明バッティングセンターとはどの
様な球団なのでありましょうか!」

アナウンサーが口角泡を飛ばし、いきり立っていた。
完全に酔いが飛んでいた。

(球団じゃねーし。)

そもそも、現役の選手でもない俺がどういう訳でこの様な晴れ舞台に引っ張り出
されているのか考える暇も無くセンターの電話、俺の携帯電話が同時に鳴り響いた。
(やりやがったな! あのおやじ!)

そう罵りながら、電話口に向かった。
こうして、マスコミの取材要請、近所の野次馬、高校からの電話、知人からの電話
対応に忙殺されて行った。

「とにかく、今は何もいえません。私も何も聞いていないんです。
少し時間をください。落ち着いたらお知らせいたします。」

こう言うしかなかった。

(一体どうなってるんだ! 安っさん、早く連絡くれ!!)

センターを閉め、窓のカーテンを閉ざして安田の連絡をひたすら待った。玄関近く
には、早くも報道陣が訪れ、カメラを三脚に立て始めていた。呼び鈴がひっきり
なしに鳴り続けていた。何がなんだか分からないまま、その日は過ぎていった。