有明バッティングセンター【前編】
「安田さんって、あの安田さんだったんですか、ぜんぜん分かりませんでしたよ。
大変失礼しました。」
「いやいや、一郎君、僕も最初は気が付かなかったよ。君のバッティングフォーム
を見て気が付いたんだが、君はもう私の事なんか忘れてしまっていると思ってね、
あえて言わなかったのだよ。」
と、照れくさそうに安田。
「そんな事より一郎君、いや、有明コーチ、優勝おめでとう。最終イニング、見事
な采配でしたね。」
「いやー、それ程でも・・・」
まんざらでもない。
「ねぇ、安田さん、1校の安藤君、いい感じじゃない? スター性もありそうだし、
看板選手がFA宣言しちゃったフライヤーズにはちょうどいい人材だと思うんだけ
ど・・・」
「よせよ、姉貴、健太は大学進学希望だぜ、今後4年間は大学野球を盛り上げる
人材だよ。」
そう、安藤健太は複数の球団から入団のオファーを受けていたにもかかわらず、
大学進学を決意していたのであった。
「恭子ちゃん、僕はね、今回の大会でとても興味を持った選手がいるんだよ。
今は目立たないけど、将来必ずフライヤーズを背負って立つ選手になると確信
しているんだ。」
「え? 誰なの? 教えてよ安田さん。私の番組で大々的に特番組ませてもらう
わよ!」
恭子が色めきたって食いついた。
「それはまだ言えないな。ごめんね恭子ちゃん。」
「そんなぁ。教えてよぅ、英兄ちゃーん。」
今後は色仕掛けかよ。にあわねぇんだっつーの。
作品名:有明バッティングセンター【前編】 作家名:ohmysky