小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

有明バッティングセンター【前編】

INDEX|38ページ/123ページ|

次のページ前のページ
 

「タイム!」

突然浩二がアンパイヤにタイムを宣言し、こちらに走ってきた。

「コーチ、どう打つんでしたっけ?」

(やれやれ、二人とも大物になるぜ。)

思惑通り浩二は打球をセンター前に運び、1塁に駒を進めた。
アンダーから繰り出される打球は打者から見ればホップして見える。しかし、
実際には球が上に上がることは絶対に無く、オーバーから繰り出される打球に
比べれば落ちが少ないのである。この球を長打にしようとしてスイングすると、
当然、ボールの下を叩くことになり、結果、内野フライになることが多い。
叩きつけるように振り下ろしてちょうど良いのだ。
ファーストベース上でうれしそうに拳を振り上げている浩二が見える。

(ばかやろう。ツーベースヒット性の当たりじゃねえか。足遅せーな!)

「よし、健太、仕上げだ! 行って来い!」

健太には事前に攻略法を叩き込んでおいた。
この試合、必ずや健太がキーマンとなるであろうと踏んだ俺は、前日の敵ピッチャー
の投球をビデオに収めて、前の晩、滞在先の旅館の1室を借りて健太にタイミン
グと配球について綿密にすり合わせを行っていたのである。後は天地神明に祈るだけだ。

1アウト、ランナー1塁。4番、ピッチャー、安藤健太の登場だ。
地元応援団の一際大きな歓声に背中を力強く押されたかのように、健太は勢い良く
バッターボックスに向かって行った。俺の与えた攻略法、それは初球のストレート
狙いだった。この1球の狙いをはずしたら、後は自分の判断で好きに打って良いと
伝えてあった。