有明バッティングセンター【前編】
第1投球目、セットポジションから、ファーストの浩二をチラッと一瞥した後、
投球動作に入った。俺の目がスローモーションモードへと切り替わる。
肩口から、ピッチャーの握りが確認できた瞬間、ストレートと確信した。
(よし! 予想通り!)
しめたとばかりに、ベンチから身を乗り出していた。
「カキーン」
健太の鋭いスイングと高い金属音と共に白い打球がセンターのはるか頭上を通り
過ぎて行った。
「やったー!」
両手を挙げて、一瞬高く跳ね上げた両足をすぐに地面に下ろすと、健太は颯爽と
1塁に向かって走り出した。あまりにうれしかったのか、3塁ベースの辺りで危う
く浩二と接触しそうになり、俺の肝を冷やした。
5番、吉田が三振に切って落とされた後の9回裏、GL学園最後の攻撃となった。
相手も死に物狂いで攻撃してくるはずだ。と、覚悟していたが、予想に反して
試合はあっけなく終わった。健太の全て時速160kmを超える剛速球で三者
三振に切って落としたのだ。
完全試合。しかも高校野球最多脱三振記録を大幅に塗り替えるという偉業をやって
のけたのだった。
作品名:有明バッティングセンター【前編】 作家名:ohmysky