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有明バッティングセンター【前編】

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俺の新しい住居は新しい職場、つまりバッティングセンターの管理室となった。
5年前に新築したマイホームはローンだけを分与され、本体はくれてやったのさ。
さぁ、これからバリバリ働いて中学2年の娘、加奈子の養育費とローン返済費用
を稼がにゃならん。
まずは、腹ごしらえ。コンビニにカップ麺でも買いに行くとするか・・・・。

広さ6畳1ルームの管理室から徒歩3分のところにそのコンビニはあった。
俺が小学生のころは、雑貨屋兼酒屋だったはずだが、こうもおしゃれに変貌する
ものか。店番のババアさえもお上品に見えるから不思議なもんだ。

コンビニの隣には道路を挟んで、俺の母校である西大1校があり、
グランドで若いやつらが清らかな汗を流しているのが見える。
校舎も俺が通っていた木造から鉄筋へと様変わりしている。

昔は「ガタ高」とか「ばか高」とかよろしくない言われ方をしていたが今は
「高校野球の名門校」としてこの辺りでは有名な高校に昇格してしまった。
俺といえば、もっぱら帰宅部宜しく6時限目の終了チャイムがなるや、
ほぼ毎日隣の酒屋のババアの目を盗んでワンカップをちょろまかしては、
バッティングセンターの電気室で悪友とハイになっていたものだ。
親父譲りの酒豪だった。今もだが・・・。

悪事が見つかっては、校長室に呼ばれ、いやな汗を流していたもんさ。
不思議と退学にはならなかった。そんな奴ばっかりだったからなぁ。
おっと、話をコンビニに戻そう。

大好きな、ピリ辛こってり系の大盛り焼きそばを物色していると、
あの名門野球部の学生たちがガヤガヤと入って来た。

「おお、後輩たちよ」と心の中でつぶやきながらまぶしいその姿を横目で
それとなく窺っていると、みんな何やら深刻な表情を浮かべて、「こまったな」
「どうするよ」「どうなるんだろう」などと囁き合っているのが見てとれた。
その囁きの中に、「かんちゃん」「コーチ」「センター」という言葉が見え隠れ
していた。