有明バッティングセンター【前編】
「ここだっ!」
フルスイングでそのボールを迎え撃つ。
「カキーン」
金属バット特有の振動が手に伝わる。
(芯を捕らえきれていない!)
打球はライト線を際どく切れてファール。
「やりますねぇ!」と西脇。
「あぶねぇ、あぶねぇ。本気モードで行こうぜ、健太。」と浩二。
「三振前の大当たりだよ!」と安田。
(えっ、安田さん?)
振り返ると、あの安田さんでさえ、少年の様に目を輝かせて、バックネットに
かぶりついている。
(おもしろくなってきたぜ!)
気を取り直して、俺はバッターボックスに立ち、グリップを握り直した。
2球目。
1球目と同じ、しかし格段に速度を増したストレートが俺に向かって来た。
スローモーションモード。
今度はさらに慎重にボールを凝視し、タイミングをシミュレーションする。
(今回は、見るだけ作戦だ。)
「ズバン」
浩二の構えたキャッチャーミットに音を立ててボールが飛び込んだ。
作品名:有明バッティングセンター【前編】 作家名:ohmysky