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有明バッティングセンター【前編】

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「やっぱりあなたも、おやっさんと同じで、見えるタチですか?」

後ろで安田が囁いた。

「ええ・・・・そうらしいですね。」

「コーチ! 敵討ちお願いしますぅ!」

西脇がいたずらっ子のような目で俺を見てバットを片手で振り回しながらやって
来た。

(この球、俺に打てるか?)

「子供らに、世の中そんなに甘ないってこと、教えたってくださいよ。コーチ!」

バックネット越しに焚き付けるのであった。

(・・・三振したくせに)

「それじゃあ、ちょっと運動不足解消と行くか。」

実際にバッターボックスに立って、この超高速シンカーを拝んでみたくなった。

「真剣勝負だ!」

してやったりと西脇がほくそ笑んだ。

左バッターボックスに立ち、ピッチャーの健太に向かって構える。

(本当のバッターボックスに立つのは何十年ぶりだろうか・・・バッティング
センターに比べるとかなり遠く感じるな。同じ距離のはずなんだが・・)

「お手柔らかにお願いしますよ、コーチ」
打てないと思っているくせに、キャッチャーの浩二がチャカして言った。
冷静な様子の健太はおもむろにロージンバッグを拾い、左手の上でポンポンと
白い粉を飛ばしていた。浩二とサインをやり取りした後、大きくワインドアップ
し、右足を膝からスッと上げて流れるような投球動作に入った。
同時に俺の目がスローモーションモードに切り替わる。
予想通り、ボールが手元でスーッと落ちて行くのが見える。