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有明バッティングセンター【前編】

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2ヶ月が経過した。
この年にしては、まあまあ見れる体付きになって来た。腹筋もうっすらと割れ目
が顔を出し始めた。
筋肉は何もしないと脂肪に変わるという人もいるが、脂肪細胞の数というのは、
成長期に増えるが、成長が止まった後はその数は変わらず、脂肪細胞の大きさが
膨らむことで肥満となるらしい。
逆に筋肉は運動するとその筋肉細胞が切れてそれを修復するために新たな筋肉
細胞が損傷部分に増殖して増えて行くのだ。もちろん運動しないと減って行くが、
脂肪に変わる事はない。
・・なんでこんな事知っているんだろう。

この2ヶ月の間、毎日の様に健太と浩二その他野球部の面々が顔を出し、マシン
を使って練習をして行った。
ボールを打ちたい気持ちをぐっと抑えて、みんなに冷やかされながらも黙々と
走り、黙々と素振りを繰り返して来たのだ。
そろそろ、ボールを相手にしても良い頃だ。

「健太、変わってくれ。」いきなりの要請に、汗でTシャツのほとんどを雑巾の
ようにダークに染めて一番新しいマシンに立ち向かっていた健太がいぶかしそう
に振り返った。

「大将、とうとうやるんっすね。」と浩二。

「おう、やるぜ。まぁ見てな。すまないが、操作盤の投球スイッチを適当に押し
てくれ。」

左バッターボックスに立ち、ボールが出てくる投球口の上に据付けられている
カウンターをじっと見つめた。
5、4、3、2、1、「シュッ」とボールが射出された。
バットを構えたままボールが通り過ぎるのをじっと見つめる。

「ドンッ」とマットにボールがぶつかる音。時速150km。MAXスピードだ。
最初からボールを打つ気は無かった。ただただボールを見つめる。

「シュッ」「ドンッ」
今度は、ボールの軌跡に出来るだけ顔を近づけ、見つめる。

「シュッ」
突然ボールが顔に向かって軌跡を描き、どんどん近づいてきた。縫い目の1つ1つまではっきりと見える。

「うおっ」体全体をのけぞらせ、鼻先1センチをボールが通り過ぎるのをまるで
コマ送り映像を見るが如く目で追いながら仰向けにひっくり返った。

「てめー。(デ)を押しやがったなコノヤロー! こ、殺す気か!」と笑い
ながら起き上がった。