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有明バッティングセンター【前編】

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「いままでは、こんな契約を申し出る選手も居なかったし、球団側もこんな都合
のいい契約を選手が呑むはずもないと想定すらしていなかったよ。考えてみれば、
双方にとって都合が言い話じゃないか。君は頑張れば頑張る程お金がもらえるし、
球団は話題になる。結果が出なければお金を払う必要がないって事だね。安田く
ん、この方向で話を進めてくれたまえ。それじゃあ、あとは任せたよ。」

そう言って古館コミッショナーは上機嫌の内に退席していった。

「原口監督にお願いがあります。」

そう俺は切り出した。

浩二に言われていた、練習への不参加を切り出すためだ。

「練習には出ないって言いたいんだろう。わかったよ。パートだもんなぁ。指揮
権は俺にあるから、打撃の実績やその日の状態がわからない奴を実践にどう使え
っていうの? 俺なら使わんねぇ。まぁ、気が向いたら練習に来て、その日の調子
をアピールしてくれたまえ。」

さすが、だてに監督はやっていない。俺が何を言ってくるかをちゃんと見抜いて
いた。さらに、指揮者として譲れない当たり前のことを言ってのけたのだった。

「はい、それで結構です。監督が使う気がなければそれでかまいません。試合に
スタメン登録あったときだけ、駆けつけます。」

俺は、そう言うしかなかった。

「まぁ、期待せずに待っていたまえ。しかし、フロントの爺いどもはそろいもそ
ろって・・・・これだから素人は嫌なんだ。失礼するよ。君の嫌いな練習がある
のでね。」

そう言って原口は去っていった。

やっちまったか?
これじゃぁ、試合に出してもらえないじゃないか。いくら出来高制で儲かるって
言っても試合に出れないんじゃあ一銭にもならん。高校生の世迷言の付き合った
俺が馬鹿だった。肩を落とし、がっくりとうなだれている俺の肩をポンと叩き、
安田が切り出した。