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有明バッティングセンター【前編】

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「いやぁ、上出来上出来、すべて筋書き通りじゃないか。監督がああいっても気
にしちゃいかんよ一郎くん。所詮、世論には勝てんのだから。この契約がマスコ
ミを騒がせることは必至だし、それで試合に出さんって事になったらどういう事
になると思う? ましてや、新型マシンで打撃成績をアピールすればなおさらの事。
それで1回でも試合にでれば後はトントン拍子に事が運ぶということさ。」

なるほど!!
さすが、何十年もこの業界で飯を食ってないねぇ、安田のおっちゃん。少しは気
が楽になった。

「さぁて、マスコミも集まったころだから、契約の記者会見に行こうか。」

そういって安田は立ち上がった。

え? もう記者会見の準備が出来てるの?
まったく、用意周到だ事。まぁ、本交渉は昨日のうちに浩二と済ませている訳だ
から当たり前か。

「あ、そうそう」

思い出したように安田が振り返って言った。

「契約は、一郎くん本人とじゃなくて、今度設立した有明ホールディングスとい
う持ち株会社との法人契約になるからよろしくね。有明ホールディングスの傘下
には、有明バッティングセンターとナミコジャパンが入る事になってます。
そうそう、源ちゃんところの西脇工房もね。もちろん総帥は一郎くんだよ。」

え、えーーーー?
それは初耳だ、昨日、浩二はそんなこと言ってなかったよ。
どうりで最近、登記所や税理士の所を行ったり来たりしていたはずだ。
まったく、油断も隙もねぇ。俺の知らねぇ所で、ばかでっかい話が、何も知らな
い俺を中心にどんどん進んでやがる。・・・まぁ、いいか。どうにでもしてくれ。
どうせ俺はその辺の才覚はゼロですから。

「俺は打つだけっすから」

浩二の口調を借りてそういった。

「そうそう、君はバット職人なんだから、打つことだけを考えていればそれで良
し。おっと、それと君のこともね。」

と、安田は、記者会見の準備完了を知らせにきたエレーナを見てそう付け加えた。

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記者会見を終えた次の日の新聞は、

「前代未聞! 契約金ゼロ! 完全出来高制のバット職人誕生!」
「有明ホールディングス総帥 有明一郎氏 プロ転向の戦略とは?」
「プロ野球もアウトソーシングの時代。古舘コミッショナー語る。」
「パートバッター、有明一郎 いくら稼げるのか?」
「ヒット1本20万、ホームラン1本100万! 勝負師有明の時給は幾らに!?」

など、さまざまな見出しが1面を飾っていた。

エレーナが買ってきてくれた複数の新聞を眺めながら、「ふーっ」と深いため息
をつき、自分の打撃の成績が、自分が関わる愛すべき大切な人達の人生を左右す
ることになる事を重く受け止めずには居られない一郎であった。


後編へつづく