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有明バッティングセンター【前編】

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「そ、そんな契約、許されるのかい?」

「それは、相手が安田さんっすから。ヒット1本20万円、ヒットがなければ
ゼロ、ホームランは1本に付きプラス100万の契約をしてください。それで、
球団の練習には参加しないという条件で。プロ野球は1シーズン144試合ある
んっす、1試合4打席の出場として、576打席っす。球団はシーズン打率最高
の3割6分台で計算するはずっすから、費用は掛かっても4000万位って計算
するはずっす。でも、僕は社長なら、打率4割は打てると思ってるっす。そんで、
ホームランを60本打てば1億超えるんっすよ。マスコミも出来高制なら、本人
の実力だから、裏取引なんで言えないし、1石2鳥じゃないっすか。」

そんな事まで計算してやがったのか。しかし、打率4割のホームラン60本って、
プロ野球会の記録を全部塗り替えちまうじゃねぇか。

「もしかして、この話って、安っさんともう済んでいるのかい?」

「はい、もちろんっす。」

・・・本当に末恐ろしいガキだ。

この狭い事務所で、すでに俺の契約交渉は行われていた。木村浩二という球団側
代理人を相手に。翌日、俺は着慣れないスーツを身に纏い、球団フロント事務所
へと向かった。フロントで用件を告げると、奥から広報の水木エレーナ嬢が登場。

「有明様、本日はどういったご用件でしょうか?」

ニコリともせず、まるで事務的な会話。

「あ、あの、えーっと、安田様と契約のこ、交渉に。」

しどろもどろに答えた。

「それでは、お取次ぎ致しますので、こちらへどうぞ。」

そういって、愛しのエレーナは踵を返し、コツコツとパンプスのヒールを鳴らし、
前を歩いて行った。