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有明バッティングセンター【前編】

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「もしかして、うちの浩二ともうすり合わせが終わっている事なんじゃないです
か?」

「お察しの通りです、後は社長の了承を得るだけという指示をもらっていてね。
まったく、お宅の支配人はやり手だねぇ。高校生にしとくにゃもったいないよ。」

この男、この分野でどこまで実力を発揮するのだろうか。電話を終えて、そ知ら
ぬ顔でハンバーガーにかぶりつく浩二を見ながら彼の商才のすばらしさに感心し
ていた。

(でも待てよ、定年後にうちで働く事が決まっている安田さんと契約交渉すれば、
それはインサイダー取引ってことになるのではなかろうか?)

目ざといマスコミのことだから、「裏取引で契約金を不正に吊り上げた。」など
と騒ぎ立てはしまいか。

「うーん。契約金ねぇ・・・。一杯もらえるに越したことはないが・・。」

腕組みをし、考え込んでしまった俺に、浩二が、

「社長、フルコミッション制って知ってますか?」

と聞いてきた。

「なんじゃい? そりゃあ。」

と俺。

「いわゆる、完全出来高制ってやつっすよ。契約金なんて要らないって行っちゃ
えばいいんっす。その代わり、完全出来高制にしてくれって言うんっすよ。」

「それって、ヒット1本いくらって事?」

「そうっす。社長はこれから、フランチャイズやら、新型マシン開発やらで忙し
いんで、球団の練習に付き合ってる時間はないんっす。それで、悪く言えば「パ
ート契約」して欲しいんっすよね。」

(パ、パート契約って、俺はパートのおじちゃんかい。)