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有明バッティングセンター【前編】

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「ごめんごめん、色々忙しくってねぇ。」

聞き慣れた声である。

「あ、安田さん、お久しぶりです。挑戦権の話、フロントに交渉してもらえまし
たか?」

ナミコ社長の後藤が親しそうに話しかけた。そこに姿を現したのは、東京フライ
ヤーズ、スカウトマンの安田英男だった。

(ありゃあ、そこまで話を進めていたのか。支配人浩二様、恐れ入りました。)

「一郎くん、久しぶり、ちょっとお邪魔するよ。」

そう言って、彼は俺の狭い部屋に入ってきた。

「コミッショナーに話したら、面白いって乗り気でねぇ。球団の宣伝にもなるし、
第2の一郎くん発掘の機会も得る事が出来るからフライヤーズが全面的に協力す
るとお伝え下さいという事でした。やりましたねぇ。これでこの計画も現実味を
帯びて来ましたね。あとはナミコさんがいいマシンを開発するだけですね。」

後藤が頷きながら俺の方に向き直り、

「有明さん。新しいマシンを開発するには、あなたのその眼が必要です。ソフト
開発するために、自社内に特別チームを編成しました。ハードウェアの試作品が
出来たらシミュレーションルームで思う存分バットを振ってもらいますよ。その
データを元に最高のマシンを開発して見せましょう。」

と、経営者独特のオーラを放ちながら言った。

「そうと決まったら、早速フランチャイズ契約の草案を作りに、税理士の先生に
会って来るっす。その後、広告代理店に寄って、プロモーションの打ち合わせを
してくるので、今日は遅くなるっすよ。」

そう言って、浩二がそそくさと管理室を後にした。

・・・末恐ろしいガキだ。