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有明バッティングセンター【前編】

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親父が汗をかきながら、「ふっ、ふっ」とバットを振る姿が見える。
大きな背中に大きな汗の染みを作って。
肩甲骨から盛り上がる筋肉とその躍動が夕陽に染まって彫刻の様に芸術的な感動
を与えていた。
親父の父、すなわち俺の祖父は親父が赤ん坊の頃、戦争で死に、祖母が学校の
教師をやりながら、女でひとつで親父以下5人の兄弟姉妹を育てた。

長男だった親父は、母親を助けるために、高校へも行かず、野良仕事や、畑仕事
を手伝っては弟、妹を大学まで面倒みていたという。
たくましい親父だった。中卒のため、ろくな仕事が無かった親父は、それでも
黙々と働き、贅沢をせず少しずつ金を貯め、俺たち兄弟を食わせ、この田舎町に
このバッティングセンターを設立した。

ああそうさ、自慢の親父であり、尊敬もしていたよ。
いつから嫌いになり、いつから話をしなくなり、いつから軽蔑するようになった
のだろう。もっともっといろんな話をしておきたかったよ。
・・・・とう・・さん。

目を開けると、健太と浩二が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「お、おじさん、大丈夫ですか?」・・二人でハモる。
・・・おお、さすがバッテリー。

「いて、いてて」。あたまに大きなたんこぶが・・・小学生以来だ。
「そのボタンはインコースの厳しい球をよける練習をするためにコーチがつけた
んっすよ」と浩二。

・・デッドボールの「デ」か。・・・くそ親父め!

「しかし、この1台は良いとしても、そっちの3台は古すぎて使えないなぁ」
と俺。

「いやいや、これが使えるんすよ。僕のキャッチングの練習や、野手の守備練習
にはこのマシンはなくてはならない機械なんっす。」再び鼻を膨らませる浩二。

彼の話によると、キャッチャーの手前でショートバンドする健太のフォークボール
をなかなか処理できない浩二を見兼ねて親父がアームの角度を調整し、不規則に
ショートバンドする様に改造したのだ。