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有明バッティングセンター【前編】

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「な、なんだか良く分からないけど、とりあえずこのバット、振ればいいんですね?」

俺はそう言って、3本あるバットの中から、黒塗りのバットを選び、いつもの準
備動作を始めた。源ちゃんが、その様子を惚れ惚れする様な顔で見つめながら、

「青龍眼は、陽眼とも言って、白龍眼は陰眼とも言うの。表裏一体って訳ね。三
国志で言うと、劉備玄徳と諸葛孔明の関係ってことになるわね。これから、私が
一郎ちゃんを手取り股取り教えてあげるわよん。」と言った。

(それを言うなら、手取り足取りだろーが。)

一通りの準備動作を終え、戦闘態勢に入った。スーっとバットを肩口まで持ち上
げ、一気にスイング。

「ブーン」

腕の回転から微妙に遅れて、バットがしなり、ヘッドスピードに加速を与えた。

(ほえー!)

こんなにも違うものか。こんなに気持ちよく振れるバットは初めてだ。まるで、
ゴルフの1番ウッドの様なしなりを見せる。しかも、ブレが無い。俺は、夢中に
なり、何度となくそのバットを唸らせていた。真剣な面持ちでそれを見ていた源
ちゃんが、

「うーん。いいわねぇ。ぶれも無いし。これをベースにしましょう。」

と、その他の2本を片付け始めた。

「ちょっと待ってよ、源ちゃん。他のも振らせてよ。」

俺が、不服そうにそう言うと、

「その必要はないわ。余計なことはするもんじゃないの。時間の無駄よ。」

にべもなくそう言って、他のバットをさっさと奥の部屋へ持っていってしまった。
その後、エレーナも手伝って、俺の体の隅々の寸法を測り、データを集めて行っ
た。俺が、くすぐったくて体を動かすもんだから、

「一郎ちゃん。感じ易いのね。」

と源ちゃんが言うと。

「そうね。」

とエレーナが言い、二人で顔を見合わせて、

「フフフ」

と笑うのだった。まるで姉妹の様に。

複雑な心境であった。