有明バッティングセンター【前編】
3ヶ月後に1本目の試作品が出来上がるというので、その時、微調整をするため
にもう1度来るという事を約束し、俺とエレーナは源ちゃんの山小屋を後にした。
時計の針はもう既に午後8時を回り、辺りは暗く、山道のずっと向こうに都会の
ネオンが微かに揺れていた。
「お腹空いたね。」
ハンドルを握るエレーナが、前を見ながら言った。
「そうだね。」
俺がそういい、少しの沈黙。
「私のマンションで、食べましょうか。何か作るわ。」
エレーナがいい事を思い付いたかの様にそう言った。
「い、いいのかい?」
そう言うと、
「なんだったら、泊って行く?」
と、いたずらっぽい目で俺の目をチラッと覗いた。
「今夜は、その青龍眼とやらをじっくり観察させてもらうわ。」
そういって、楽しそうに微笑んだ。車は、高校生の様に心臓をドキドキさせた俺
を乗せ、エレーナの住むマンションに繋がる道を軽快に進んで行った。
作品名:有明バッティングセンター【前編】 作家名:ohmysky