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有明バッティングセンター【前編】

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これが、俺と源ちゃんとの衝撃的な出会いだった。後で知ったが、彼はプロ野球
界では知る人ぞ知る、バット製作のプロで神様と呼ばれる存在だった。日本プロ
野球の選手はもちろんの事、大リーガーからもオファーの来る人気者だが、偏屈
な彼は、本人が直接頼みに来て、彼が気に入った人間にしかバットを作らないの
だ。どうやら俺は一目ぼれ・・いや、一目で気に入られたらしい。

改めて玄関の戸口から中を見ると、そこは土間になっていて、バットを削り出す
ための旋盤機械が数台並んでおり、作りかけのバット、角材やノミ、金槌などの
道具が散乱していた。

「一郎ちゃん。」

「なんでしょう」

「呼んで見ただけ〜」

そういいながら、源ちゃんはまるで少女の様に嬉しそうに、スキップをしながら、
奥の部屋へと消えていった。

(おぇ!)

そんな顔をして、おれはエレーナの方に、苦しそうな顔を向けた。

「好かれて良かったじゃない! 彼はめったな事じゃ、初対面の人にバットを作っ
てはくれないのよ。」

それにしても、あの顔の雰囲気はどこかで見たことがあるような気がする・・・。

西脇って・・・・あっ! 西脇大悟!

「エレーナ、もしかして源ちゃんって、プロ野球選手だった息子がいるとか?」

「あら、良く分かったわね。でも、薬物使用かなんかで、プロ野球界から追放さ
れたって聞いたわ。」

「知ってるよ。だって、西脇大悟は、西大1校野球部の監督で、俺はそこのバッ
ティングコーチだったんだから。安っさんから何も聞いてないのか?」

「あら、そうだったの。知らなかったわ。安田さんとは部署も違うし、あまり話
さないもの。それにしても縁があるのね。」

「あれ? ってことは源っちゃんってあっちの方はノーマルなの?」

思わず、大きな声を出してしまった。