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有明バッティングセンター【前編】

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(この男、ただ者ではないな・・・)

ふっとその張り詰めた気を開放し、もとの顔つきに戻ったその男は、

「まぁ、かわいい! 私、西脇源五郎よん。 源ちゃんって呼んでね。一郎ちゃん。」

といって、俺にハグをしてきた。その動きはものすごく俊敏で、俺はそれを避け
ることが出来ず、男の両腕が俺の背中に回るのをなすすべも無く受け入れるしか
なかった。ちょうど男の顔が俺の顔の横にほっぺたをくっつけそうになるほど迫
り、顔に似合わぬ芳しい香水の香りを食らった俺は、軽いめまいを覚えた。

(き・・・・、気持ちわりぃ。)

男の身長は、182cmある俺の身長とそう変わらない事が、彼の顔の位置で分
かった。

「龍眼を持ってるのね、ステキ。」

耳元でそう囁くなり、その男は俺のほっぺたにチュッとやりやがった。その様子
を見ていたエレーナが、

「フフフ、源ちゃん、気に入った様ね。それじゃ、10本程、お願いできるかし
ら?」

と、大そう嬉しそうに言った。

(おいおい、俺がオカマにチューされて、そんなに嬉しいか。)

やっとの事で、背中に回された手を振りほどき、自由になった俺を、男は名残惜
しそうに見つめながら、

「もちろんよ。 一郎ちゃんの為ならなんだってするわ!」

と言いながら、またもやハグをしようと迫ってきた。

(ヒー!、なにすんねん。エレーナ、助けて!)

今度は、上手く身をかわすと、男は残念そうに、

「うーん、いじわるぅ。」と、いやいやのポーズをするのだった。

(なんだこいつ!!)