moonlight(後編)
ややあって、サッ、と未知流は右手を挙げ、
「当然のことをやったまでよ!」
と言いながら、公園を出ていく。
ネオは安心したように、未知流の背中を見つめた。
心の中で、「ありがとう」と言いながら、
「ま、待ってよ~」
自転車の鍵を開け、押しながら走って未知流の下へと向かった。
「まっ、ネオ先輩のためなら、しょうがないっスね!」
プレハブ小屋で、昼にあった出来事をネオから聞いた絢都は、開き直った態度で受け入れる。
巧も、
「……やりましょう!」
とクールな態度を装うも、彼の胸の中には熱いものが込みあがっているなとネオは感じた。
隣にいた未知流に左肩を、軽く叩かれる。
本当に、いいメンバーが加わってくれたものだ。
「二人とも、ありがとう!」
ネオは、絢都と巧に最大限の感謝を礼で表す。
そんなネオに一瞬戸惑うも、ニッ! と絢都は口を横に広げて、
「オレらに礼は不要っスよ、先輩。どーせ、嫌だとか言っても、みっちぃ先輩が説得するでしょうし……ね。何が何でもやるって顔をしていましたよ。だったら、俺たち一年が文句を言う義理は無いっスよ」
「絢都」
未知流は見透かされていたかと思いながら、笑っている絢都を見つめた。
絢都は隣にいる巧に、なあ? と同意を求める。
「……う、うん。俺たちの曲で、彼女が前へ向いてくれるのであれば、これほど嬉しいことはないですよ……それこそ、『moment's』じゃないですか!」
「タックン……」と、巧の思わぬ言葉に、目を見張る。
「も、もう、タっくんのくせに、格好いい事を言っちゃって」
ネオにからかわれ、巧の顔は赤くなる。
「そ・れ・に、オレたちは先輩のワガママに、いっつもついて行っているだけっスからねー!」
と絢都がネオに向かって悪戯っぽい表情を浮かべる。
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ