moonlight(後編)
未知流に深く頷く。もう迷いはない、と。
彼女はネオの両肩を再びがっちりと掴み、
「よーし、それでこそネオよ!! いや、ネオだけじゃない! あたし、ナル男、ター坊――moment'sの本気(マジ)の本気(マジ)をぶつけて、あの子の笑顔を取り戻して、あのクソ野郎の鼻をボッキボキにへし折ってやろうぜ!!」
「み、みっちぃ~気合い入れ過ぎぃ~」
ヒートアップしすぎて、思わずネオの肩を揺らしていたことに気づく。
「あ、ごめん」
ピタッ、と動きが止まり、手が離れる。目が回ったように、前後ろへ揺れた感覚が残る。
「もう~」
ぷく~っ、とネオは顔を膨らませて友人を見つめる。
その顔を見て、もう大丈夫だな、と未知流は思った。いつものネオだ。
ハハハハハ! と思わず笑ってしまう。
ネオも未知流の笑いにつられる。
ネオの心が晴れてきたように、雨もいつの間にか止み、雨雲の間から希望の光が二人を照らした。
未知流は、ん~っ、と背伸びしながら、
「さぁーてと! そうと決まったら、今日の練習から何とかしないとね。 まずはあの二人を説得するのは……なんとかなるけど、問題は曲だなぁ。こればっかりは話し合わないと。よし! 学校に戻るよ、ネオ!」
「う、うん……」
立ち上がり、赤い傘をもって先に歩く未知流を見つめる。
何か言わなくては、という気持ちが、彼女が先を行く度にどんどん強くなる。
「み、みっちぃ!」
未知流に向かって叫ぶ。
彼女はネオに背中を向けたまま、
「何?」
と訊ねる。背中を向けても、微笑んでいるのが分かる。
「あ、あのね! 来てくれてありがとう。そして、ごめん……あたし、不器用で生意気だから、これからも素直に言えないかもしれないけど……わたしの友達でいてくれる? 頼っても、いい!?」
友人に対して、言いたかったことを全て吐き出したかのように、ネオは長い息を吐いた。
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ