moonlight(後編)
5分、10分、15分と。
そして20分が経過。
両者、決着がつかず、唇が渇き、息が漏れる。
未知流は右手で唇を拭いて、
「やあっと、ネオらしくなってきたじゃないの」
うっすらと笑みを浮かべる。
生意気なネオが戻ってきて、少し安心したのだ。
「みっちぃ……」
立ち上がった彼女を見上げるネオ。
「まぁ、何はともあれ、あたしもネオの気持ちと同じだよ。ネオの友達は、あたしの友達でもあるから、ね」
未知流は左目だけ閉じ、ウインクをする。
「助けようよ、竹下さんを!」
ネオの両手を握る。
「で、でも、助けようって言っても、どうすれば……」
救いの手が欲しいと思わせるような相貌(そうぼう)で、未知流を見つめる。
「そんなの簡単よ!」
「え?」
にっこり、と余裕の笑みを見せる未知流。
「歌よ!」
「歌!?」
ネオは思わず目を見開く。
「そうよ! ネオが大好きな歌!! 二人でやってたときに話してくれたじゃない、歌の魅力を!! 歌には魂が宿っていて、人と人との想いや絆をつなぐ、大切な大切な、『内に秘めた想い』を伝える力があるって!! 今こそ、その力を信じるときよ!!」
そうだ。そうだよ……。
歌――自分の気持ちを必要以上に伝えられる、わたしの唯一の魔法。わたしが輝くことを許してくれる、わたしの人生で、今一番誇れるもの。
――なんで、すぐ近くにあるものを忘れていたのよ!
うん。みっちぃの言う通りだ。今こそ、わたしの想いを『歌』に込めないと! 『歌』の力を信じないと!
希望が見えてきた。
ネオから暗い表情が消えていき、決意を固めた真剣な表情へと変わる。
「みっちぃ、わたし決めた! 実緒のために歌うよ! どんな結果になっても、やってやるわ!!」
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ