moonlight(後編)
コンクリートの上に置いた両手に、自然と力が入り、あの男への怒りが込み上がる。
「実緒は……あいつのせいで、深い傷を負ってしまった。わたしの手を掴めないほど、ズタズタにされて……わたしだけは、実緒の味方だって、言いたかったのに……! あたしの態度は、やっぱり独りよがりだったのかぁ……」
くやしいよ、と呟きながら、ネオは項垂れてしまう。
「あんな奴のせいで、あいつと一緒にされて、親友としての時間を、簡単に無かったことにされるなんて……!」
「ネオ……」
「もう、終わり、なのかな……?」
「え!?」
『終わり』というネオらしくもない発言に、未知流は思わず彼女の方へと振り向く。
「この関係は……終わりにした方がいいのかな……いつも、いつも、精一杯やれることはやってきたけど……今回ばかりは……諦めた方が……」
呻くネオ。
一人でずっと考えるネオ。
たった一人で苦しむネオ。
相談はするけど、頼ることを知らないネオ。
なんで、なんで、ボロボロになっても『力を貸して』って言ってくれないんだよ! あたしはそんなに頼りないの? 頼ってよ!
――なんで頼らないだよ!
「バカ!!」
未知流の想いが溢れだす。
自然と立ち上がり、うじうじネオを見下ろす。
「みっちぃ……」
ネオは目を丸くしながら、未知流を見上げる。
「あたしはいつもネオの本気(マジ)を見てきた! その結果、同好会として認められ、絢都とター坊が加わり、バンドとして成立し、そして総合祭のステージに立つ夢も叶った! あんたのその諦めの悪さは、あたしやメンバーに最高のプレゼントを運んできたじゃない!! 今回だってそうなるわよ!!」
「みっちぃ……でも……」
未知流から視線を外し、顔を伏せる。
あー、もーっ!!
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ