moonlight(後編)
後悔、絶望など、いろんな感情が混じり合ったネオの想いが、雨脚(あまあし)を強くさせた。雨が、ネオの身体を濡らす。
後ろから、足跡が微かに聞こえてくる。
ザッ、ザッ、と。
誰かが、立ち止まった。
「……」
――未知流が、泣いているネオの頭上に、赤い傘をそっと差した。
実緒の家の近くにある、つい最近できたような真新しい公園に設置された公衆便所の入口で二人は雨宿りをし、雨脚が弱まるのを待った。
雨が静かに降り続く。ネオはその場で座ったまま、潤んだ瞳で公園の風景をじっと見つめた。彼女の後ろに置いてある自転車が、彼女の心境を表しているかのように、冷たく光る。
そんな彼女を、左隣にいる未知流は立ったまま、黙って見守った。かける言葉がでてこない。いや、ここは落ち着くまで待つべきだと感じた。ヘタに言葉を発しても、彼女を余計に傷つけるだけだ。
だからせめて、彼女が一人にならないように、しっかり支えてあげなければと、心に強く思った。大事なmoment'sのメンバーとして。そして、高校生活で初めてできた、大事な大事な一人の友達として。ただただ、彼女が口を開くのを待つ。
小一時間が経過する。
「……ありがとう、みっちぃ」
ぐすん、と鼻を鳴らしながら、待っていた友人にネオは、感謝の言葉を述べた。
「礼には及ばないよ。当然のことをしたまでさ」
どことなく強がっている未知流の声に、ネオは隠れて微苦笑して見せる。
未知流も静かに腰を下ろし、彼女の濡れたポニーテールにした髪を優しく撫でる。髪も花が元気を無くしたように、しおれている。
未知流は雨に濡れた公園の風景を見ながら、口を開いた。
「……美術部の部長から聞いたよ。彼女――竹下さんが、同じクラスの武藤にヒドイ仕打ちを受けていたってことを。アイツ、誰からも好かれていたヤツだったのに、5月くらいから急にヤンキーみたいな恰好になっていたから、何があったんだろうと少しは思ってたけど……まさか、あんな卑劣なことをしていたなんてね。……ホント、高校生になっても『正しい』と『悪い』の区別もつかない、ガキの思考を持った『オレ様クソ野郎』がいたとはね。ホンッと、学校じゃなかったら、空手でボッコボコにシメてやりたかったよ!」
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ