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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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moonlight(後編)

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 だが……。
 タイムシフトがあと八分で終わってしまう。
 もう、時は来てしまった。
 未知流がネオの下に駆け寄り、左肩を叩く。彼女の顔を見つめるネオ。
 タイムリミットだと思った。しかし、未知流が講堂の入口の方へ指を差す。
 その視線の先には……、
「!」
 講堂の入口に、アカネの後ろにポツンと立っている女性がいる。
 アカネが目配せしながら親指を立てる。
 ――彼女しかいない!
 急いで来たからか、彼女は息を吐きながら、少しずつネオが立っている舞台の方へと進む。
 これで準備は整った。
 ネオは観客にばれないように顔を下に向け、笑みを浮かべる。
 そして、
「お待たせしてゴメン! よーし、役者も揃ったことだし、今から最後の、moment'sのとっておきのオリジナル新曲をやっちゃうわよ―――――っ!!!!」
 右手を突き上げて、宣言する。
 歓声の渦の中、たった一人の女の子を凝視しながら、ネオは真剣な目つきで学生たちに応える。
「これは……みんなにも、そしてわたしにもありえることだけど……傷つけたり、傷ついたり、拒絶したり、されたり、色々な経験を通して、一人ぼっちになりたいこともあると思います……でも、絶対に一人ではない。世の中には家族を始めとする、たっくさんの人がいる。その中には嫌う人もいる。でも、自分を受け入れてくれる人は必ずどこかにいるはず。心が折れそうになった自分を前へと後押ししてくれる人がきっといる。そんな、互いに助け合う関係は、どんなところでも結ばれる。見えなくても、後ろでそれに支えられているはずだよ。そんな想いを全ての人に捧げます……これは、私の、友達への、不器用な気持ちを歌詞に込めた、大切な曲です」
 涙をこらえながら、震える口から自分の気持ちを言い尽くし、
「聴いてください。『moonlight』」
 始まりの合図を告げる。
 その瞬間、ステージのライトが、ネオだけを照らす。まるで、月から見守る聖女のようだ。
 その聖女を彼女――実緒は見つめる。
 優しくて、力強いエレキギターの音が鳴り響く。
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ