moonlight(後編)
と自分はアニソン好きだと主張し、「総合祭では絶対に歌いたい!」と言って引き下がらなかったのだ。
「『ゼット!』の人がそう言ってもなぁ。わたし、わっかんないし」
その一言に、どんだけもったいないことをしているんだこの人、と絢都は心の底から思う。
「うー、みっちぃ先輩ぃ~」
泣きそうな呻き声をあげながら、隣にいる未知流に懇願する。
未知流は顎に手を置き、目を瞑る。そして、数十秒も立たないうちに、何かを決断したように、パチッと目を開いて顎から手を離し、
「ネオ……やらせようよ!」
「みっちぃ先輩!」
未知流の決断に、絢都は目を輝かせる。
「ここまでコイツが言うんなら、好きにやらせた方が今後のためにもなると思うよ。ここで断って、今、『やめます!』とか言われても困るし。それにあたしも、」
そして不敵な笑みを浮かべ、
「アニソンを演奏することに、興味がある。面白そうじゃないの!」
ふふん! と鼻で笑った。
その発言にネオは、マ、マジ!? と驚愕する。
「まっ、これもmoment'sに必要だってことよ!」
笑いながら、両肩を叩く。
「……というわけで、文句を言ったら……」
ネオの両肩に鉛が乗っているかのように、グッ! と未知流の両手が重くのしかかる。
これはもう逆らえまい。
「わ、わかったわよ~。……だったら、絢都! そ~んなに自信があるのなら、本気で歌ってもらうからね!」
「言われるまでもねえッス! やってやりますよ!!」
――とプレッシャーをかけたのだが、見事な歌いっぷりに、ネオも心の中で「すご……」と思った。歌声を披露したときから思っていたけど、まさかここまでとは。
明らかに女性ものの曲ではあるが、高い音域をものともせず平気な顔で楽しく歌っているのだ。さすが、中学のときにもバンドを組んで、文化祭をアニソンで盛り上げただけのことはある。あのアニソンの帝王も驚くに違いない。
「――君にノックアウト、ノックアウト、ノ――――クゥ、アウトォ――――――ッ!!!!」
空に向かってシャウトし、楽園の終幕を告げた。
うお――――――っ!! と観客の叫び声が響く。
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ