moonlight(後編)
第三章(後編)
「……!」
実緒の言葉に、ネオは何もかもが真っ白な風景を一瞬見た。何もない、空っぽの世界を。
二階へと向かう音が聞こえる。
「実緒、実緒! ミオ――――――ッ!!」
しかし、ネオの悲痛な叫びも空しく、ドンッ! と自室に引きこもった音が外から聞こえた。
「……」
彼女の心の傷は、修復することが出来ないほど、深かった。彼女の手を掴むには、あまりにも遠い距離に自分はいた。
何もかもが、遅かった。
小学生の頃にあったことが再び、ドラマのハイライトみたいにパッ、パッ、とシーンが切り替わりながら、頭の中で再現される。
あの頃と変わらない。友達の力にもなっていない。
その事実だけが、ネオの胸に刻まれる。
脱力して、両膝が自然と冷たいコンクリートの上につく。
違う……違う……。
わたしは、わたしは、本当に実緒のことを……。
助けたかったから、ここに来たのよ。
本当なのよ……。
身体が震え、絶望感でいっぱいになる。
そんな彼女の気持ちが、雨で映し出される。ポツ、ポツ、と空から少しずつ降ってくる。
「実緒……みお……わたしたち、しんゆう、でしょ……」
わたしの、せい、で……。
わたしが気づいてたら、どうだったの? 教えてよ……ねぇ、実緒……。
こんなことで……こんな、バカみたいなことで……。
「うわああああああああ――――――っ!!」
大粒の涙がとめどなく、流れ落ちた。
その涙を隠すように、雨が降り出した。
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ