moonlight(後編)
「はい……ネオさんの携帯写真と同じ人は、どこにも……」
巧はネオに携帯を返す。
「そう……」
ネオの顔が暗くなる。
――やっぱり、そうだよね。
そんな言葉を胸の中で思っているネオに、
「大丈夫さ」
未知流が声をかける。
「あんたの気持ちはちゃーんと届いている。『最後のとっておき』までには、来るはずさ。信じてみようぜ。なーに、来なかったらCDに焼き付けて、意地でも渡しに行きゃあいいんだよ!」
友の声に、ネオの不安という名の鼓動は収まった。
「うん。大丈夫。ありがとう、みっちぃ」
張りのあるしっかりとした声色で、ネオは答えた。
「すいませーん! そろそろスタンバイをお願いしまーす!」
暗幕のところに立っている、総合祭実行委員の男子学生が四人に声をかける。
どうやら『夢の舞台』に立つ時間のようだ。
「よーし、それじゃあ、」
ネオが未知流を見つめる。彼女は頷き、
「うん! 円陣を組むよー!!」
おおっ! と四人は円になり、みっちぃ、絢都、巧、ネオの順に手を重ね、本番前の儀式を始める。
「みんなぁ! 今日は思い出に残る最っっっ高のライブにするわよ!! いいわね!!」
「「「おおうっ!!」」」
リーダーの叫びにメンバーが応える。そして、
「せーの、」
勢いよく弾ませ、四人の手が一斉に振り上がり、
「「「「ウルトラソウッ!!」」」」
思いっきり声を張り上げた。
「さあ、行くわよ!」
自分たちの音楽に絶対の自信を胸に秘め、ネオたちは今か今かと待ちわびている学生たちの下へ――自分たちが唯一大きな輝きを放つステージへと向かった。彼女たちの顔は、岩国総合高校の学生ではなく、バンドグループ『moment's』――Neo(ネオ)、michi(未知流)、ken(絢都)、taku(巧)へと姿を変えた――。
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ