moonlight(後編)
第四章
「実緒ーっ! 手紙が届いているわよーっ!」
「……はい」
一〇月五日。午前一〇時。
一階から母親の声がした実緒は、パジャマのまま階段を下り、白い封筒を受け取る。その姿に生気は感じられない。身体中が絶望に満ちている。
自分の部屋に戻り、確かめてみる。
「宛て名が、ない」
不思議に思いながら、実緒は封筒を裏返して見る。
右下に、『実緒へ』という達筆な字が書かれている。
――明らかに怪しい。
実緒は恐る恐る、封筒を開けてみる。
中には三つ折りにされた用紙が入っていた。
ゆっくりと開いていき、読んでみる。
「……!」
その瞬間、実緒の目から一粒の涙が零れた。
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ