moonlight(後編)
疾走感にあふれた曲は飛ばし、バラードばかりを聴いてみる。
すると、
『今もどこかで微笑んでいますように…』
「!」
アイポッドから流れる歌詞に、ネオは耳を奪われた。
小さい頃から自分が好きなアーティスト、Every Little Thing(通称ELT)の『good night』に。
そうだ。これだ。
ネオはガバッ! と起き上がって月を眺める。
「月ってこうやって見ると、わたしのことを見守っているみたいだよね。だったら、月から彼女が、実緒が元気でいるようにと願っている……。そういう歌詞にすれば……!」
いける!
ネオは、再び布団に寝そべり、置いてある紙に鉛筆で書いていった。すらすらと、言葉が浮かんでくる。
そんな彼女を、月が優しく見守った。
――実緒! わたしやるよ!
親友への想いをネオは歌詞に込めていった。
そして、一〇月四日。一週間という短い期間の中で、新曲は完成し、明日の総合祭でやる選曲の音合わせも完了した。
ネオは家に帰る前に、実緒の家のポストに手紙をそっと入れた。
moment'sのメンバーが夢にまで見たステージ――総合祭でのライブへの招待状を。
「あんたがいないとライブが始まらない」という想いを込めて。
彼女への想いを胸に、ネオの総合祭が始まる。
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ