moonlight(後編)
――ありがとう。
心の底から、ネオは思った。
そう。わたしには仲間がいる。一人で考える必要なんてないんだ。分からないなら、力を貸してもらえばいい。そうやって、力を合わせれば扉は必ず開いていく。
ネオは、それを実感した。もっと早く気づいていたら、とも思った。
でも、それでいい。
実緒にも、この力を、『実緒の背中にはわたしたちがいる』ことを教えることが出来るのだから。
ネオはこの想いを、今までの音楽活動の中で、最高の歌詞を書いてやる、と誓った。
これからの、『わたしたち』のためにも。
「う~ん」
二十三時三〇分。明かりが消えた暗い部屋で、ピンクのパジャマを着たネオは、布団の中で呻っていた。
ネオの家は、築三十年の古ぼけた二階建ての木の家で、実桜の家がある場所よりも緩やかな坂の上にできた団地にある。
ネオは二階の右の部屋を使っている。ちなみに左の部屋は、兄が使っている。
実緒にも話した通り、机の上は学校で使っているノートや音楽雑誌がぐちゃぐちゃに散乱しており(その上、服も置きっぱなし)、女性らしからぬ、部屋の汚さだ。よく堂々と友達を入れることができるものだ。
その空間でネオは、一〇代に絶大な人気のあるラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』を聴きながら、用紙とにらめっこしていた。
「ううーん」
ああは言ったものの、なかなか歌詞が浮かんでこない。
綺麗な言葉の方がいいのかなと考えるが、出てくる言葉はストレートな言葉ばかり。器用な言い回しの歌詞を書くのは、ネオにとっては難しかった。
MC(教頭)の名台詞である『高二はいいぞ!』を聴いたところで、MDコンボの電源を切る。そして両耳にイヤホンを差し込み、アイポッドを起動させてゴロンと体を捻って、プロのアーティストの楽曲を聴きながら月を眺める。
今日は満月のようだ。雨が昼に降ったせいか、雲一つなく、星と共にネオを明るく照らしている。
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ