漢字一文字の旅 二巻 第一章より
十三の二 【迷】
【迷】、「しんにゅう」の上に「米」が乗る。
一説によると、「米」は四方八方に通じる道。
そして歩いて行く意味の「しんにゅう」と組み合わさって、どの方向に行けばよいのか分からない状況を表しているとか。
結果、道に迷い、「迷子」となってしまう。
さてさて、この道に迷うという事態、人によって差がある。
いわゆる方向音痴の人がいる。
目的地に向かう時、人は誰もが脳内に地図を広げる。
だが方向音痴の人は自分を動かさず、地図を上げ下げ、さらにぐるぐる回してしまうのだ。
例えば角を曲がった時、脳内地図を九〇渡回す。
挙げ句にずっと回しっ放しで、最終的に訳がわからなくなるそうな。
一方、方向音痴でない人は脳内地図を固定する。
そして、その上を自分のキャラクターを歩かせて行く。
どうもここに迷う迷わない差が出ると言われている。
だが、最近随分と便利になった。
例えば車移動の場合、ナビがある。
しかし、これでも油断大敵。
目的地付近になれば、案内が終了してしまう。
実はそこからが勝負。
百メーター内にあって、迷ってしまうことがあるのだから、笑い話にもならない。
とにかく【迷】、四方八方に通じる道の前に立っているのだから、そりゃあ迷いますよね、と居直るしかない。そんな漢字なのだ。
作品名:漢字一文字の旅 二巻 第一章より 作家名:鮎風 遊