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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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十三の一  【慈】



【慈】、「心」の上の部は「やしなう」の意味があり、その心が「いつくしむ」だとか。
ここから慈愛、慈雨、慈悲、慈母などの熟語が生まれた。

こんな愛深き【慈】を使った野菜がある。
それは【慈姑】。
「姑」(しゅうとめ)の慈愛ある野菜、それは一体何なんだろうか。
苦労してる嫁から「そんな野菜なんてあり得ない、巫山戯ないで!」と声が飛んできそうだ。

【慈姑】、それは「クワイ」だ。
芽が出ることから縁起が良い。おせち料理の定番。
しかし、苦い。まさに姑か?

そんな慈姑が頭に貼り付けば、「慈姑頭」となる。
これは江戸時代、町医者などが結った髪型で、髪を一本で後頭部で束ねる。
慈姑のひょろっとした芽が出ているように見えるから、「慈姑頭」だ。
ポニーテールなら色気もあるが、貧乏そうで滑稽な髪型、……、いや失礼しました。

しかし、最近町中で時々慈姑頭のおっちゃんを見掛けるから不思議だ。
江戸時代にタイムスリップした脳外科医、JIN(南方仁)きどりなのだろうか?

いやいや【慈】の漢字が付いているから、人生を楽しみ、慈しむ気持ちがあるのだ、ということにしときましょう。