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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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十一の五  【矢】



【矢】、まさに矢の形だ。

【矢】は神聖なものであり、誓約の時に矢が使われるため、「矢う」(ちかう)とも読まれる。
また音読みでは(シ)、誓う言葉は「矢言」(しげん)、流れる矢は「流矢」(りゅうし)という。

さてさて、時代は「今でしょ」のアベノミクス。
(1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長戦略
これらが三本の矢だという。

元々三本の【矢】は毛利元就(もうりもとなり)の伝説。
矢一本なら一人の力で折れる。だが三本となれば折れない。
従って三人で力を合わせれば強い、という息子たちへの教え。

だが、この伝説は後から作られたものだとされている。
それ以外に、実は三本の矢はバキッと折れてしまった、という説もある。
それは、三人協力し合っても、折れる時は折れるものだという悲観的な教訓となっている。

いずれにしてもアベノミクスの三本の【矢】、折れないことを祈るが、毛利元就の【矢】も含めて、真実はたった一つなのだ。

そう、いつの世も、光陰【矢】の如しなり……なのだ。