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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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十一の二  【座】



【座】、中の「坐」は裁判を受けるため、神の左右に人が「土」に座る形だとか。
そして、それは廟で行われたため、その屋根の形の「广」が被せられたそうな。

こんな【座】、寺院や神社、あるいは権力者の保護を受けた組合を【座】と呼ぶ。
例えば、中世の油商人の組織が「油座」、また青苧商人が結成した座を「青芋座」とした。

そんな閉鎖的で権力的な【座】を打ち破るように、織田信長は安土城城下に商業特区、つまり「楽市楽座」を開いた。
当時としてはなんと斬新なアイデアだっただろうか。

この「楽」という漢字はフリー(自由)という意味であり、要は買う側に対してはフリーマーケット。
また売る側に対しては楽座、つまり組織に属す必要はないということなのだ。

そして時を経て、豊臣秀吉は「銀座」を全国展開させた。
秀吉は大坂に常是座(じょうぜざ)を開設させた。
銀貨に刻印を打ち、銀貨の品位を保証するためだ。

その後、覇権を握った徳川家康は慶長六年(1601年)に京都伏見に「銀座」、貨幣鋳造所を開設した。
その後の慶長十七年、江戸新両替町に「銀座」、貨幣鋳造を開いた。
このように「銀座」の歴史は古い。

また「星座」、なぜ【座】なのだろうか?
かっての中国では北極星が皇帝であり、その周りの家臣たちの位置を【座】と言ったとか。
それに見立てて、星の集まりを「星座」と呼ぶようになったそうな。

事ほど左様に、【座】という漢字、いろいろなものを座らせてくれているのだ。