漢字一文字の旅 二巻 第一章より
十一の一 【得】
【得】の左の行人偏は「行く」の意味。
そして右部は、手の意味のある「寸」に「貝」が乗ってる。
これらの組み合わせによる意味は、南方へと出掛けて行き、価値ある子安貝(貨幣)を手に入れること。
つまり、ここから「える」の意味になったとか。
ウーン、なるほどと感心してしまう。
さて、この【得】は(とく)と読むが、同じ(とく)でもすぐれた品性を表す「徳」がある。
ちょっとこの二つの関係がややこしい。
店舗に物を買いに行ったら、店主が「これ、おとくですよ」と言い寄ってくる。
この(とく)は【得】ではなく、「徳」だ。
要は、「気高き商売をしてます、嘘はついてませんよ」という「お徳」なのだ。
本当はお【得】の方が安いようで、思わず買ってしまうと思うが……。
また、「早起きは三文のとく」、これも「徳」が正しい。
三文の【得】ではないのだ。
なにか早起きした方が儲かるような気がするが……。
どうも【得】という漢字、いつも暮らしの欲が絡まってしまうようだ。
作品名:漢字一文字の旅 二巻 第一章より 作家名:鮎風 遊