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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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十の三  【掏】



【掏】は(トウ)と音読みし、右部は窯で土器を焼く形だとか。
こんな熟語に『掏摸』がある。

こんな字、なかなか読めない。
だが、(すり)と読む。
いわゆる人様から財布や物品を失敬する「スリ」のことだ。

スリは窃盗罪であるが、時代は明治から昭和、スリたちが多く暗躍していた。
関東一円の大親分が仕立屋の銀次、本名は富田銀次郎と言ったらしい。

それに比べ、スリの新人は財布を抜き取ると恐くなり、すぐに走り出すそうな。
そこから新人を「駆け出し」と呼ぶようになったとか。

そんなスリたち、いろんなヤツがいた。
ケツパーの三ちゃん、ケツパーとはケツは尻、パーは財布のこと。
尻のポケットの上から財布を触り、どれくらいの金額が入っているかを当て、抜き取った。
またケツパーの梅ジイ、ベテランであったが、最後はアメ横商店街で逮捕された。

デパ地下を専門にしていたのが、デパ地下のさと婆。
それに声掛けタマちゃん。
優しく話し掛け、そのスキに財布を抜き取ったとか。

多くのスリたちがいたが、最近話題に上がったのが駒崎姉妹。
スリデビューがこまどり姉妹と同じ頃だったとか。
そして2012年10月29日、姉は駒崎恵美子80歳、妹は妙子72歳、、梅田の阪急デパートで財布を盗んだと逮捕された。
スリ歴50年のベテランではあったが、高齢のため動きが鈍くなっていたとか。

とにかく【掏】(トウ)という漢字、『掏摸』(スリ)といけない熟語になるが、どことなく笑えてくるから不思議だ。