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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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六の三  【晶】



【晶】は象形文字であり、星の光が三つ集合した形だとか。
そう言われてつくづく【晶】を眺めてみれば、なるほど、煌めいているようにも見えてくる。

かって堺に鳳志よう(ほうしょう)という女性がいた。この女性、旅館の歌会で知り合った寛(ひろし)という男と不倫関係に落ちた。後は略奪結婚。

その後、日露戦争に従軍する弟を思い、
 あゝおとうとよ、君を泣く
 君死にたまふことなかれ
 末に生まれし君なれば
 親のなさけはまさりしも
 ……
と詩を発表。

そして夫・寛のプロデュースで処女歌集『みだれ髪』を世に出す。
この歌人こそ、「志よう」という名前を【晶】に置き換えた『与謝野晶子』だ。

夫は与謝野鉄幹。
まさに三つの星の輝きと、鉄とが組み合わさった夫婦だ。
そのためか、鉄より【晶】の方が煌めいていたのだろう、結婚後、与謝野鉄幹は鳴かず飛ばずの歌人となってしまった。

このように【晶】という漢字、他よりも美しく煌めき、かつ力強いのだ。


参考
与謝野晶子と鉄幹を書いた超短編小説「鞍馬寺のパワー」がある。
読んで頂ければ、嬉しいです。

http://novelist.jp/58818_p132.html