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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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静19歳は山を下りた。
しかし、案の定、捕まってしまった。
そして、その後人質として鎌倉へと送られる。

鎌倉の主は頼朝と、妻の政子。
この二人は静御前が妊娠6ヶ月の身であることを見抜いてはいたが、頼朝と政子の面前で京の舞を踊ることを所望した。

静はこれを受け、鶴岡八幡宮の舞台で堂々と二曲舞った。

その歌は
「吉野山 峰の白雪 踏み分けて 入りにし人の あとぞ恋しき」
吉野山で、消えて行ってしまった人(義経)が恋しい

「しづやしづ しづのをだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな」
おだまきのように繰り返し思う、昔であったらどんなに良いことか

全戦全勝の若きヒーローと都一番の白拍子、なぜこんなことになってしまったのだろうか?
静はこんな二人の悲しい運命を恨んだ。

しかし都一番の白拍子だ。
そのプライドを掛け、そして義経の愛を信じ、義経を追う頼朝と政子の面前で、うろたえることなく堂々と歌い舞ったのだ。

こんな出来事は噂としてあっという間に全国に広がった。そして義経もそれを耳にし、唇を噛みしめ、静との再会を心に誓う。

さらに月日は流れ、1186年7月29日、静御前は義経の男児を出産した。
だが、まことに不幸なことだ。
男児であったがために、さらなる悲劇が静の身の上に起こってしまう。
頼朝と政子はそのいたいけない稚児を静から無理矢理に取り上げた。
そして慈悲もなく、由比ガ浜の海へと投げ捨ててしまったのだ。

その後、9月16日、静御前は鎌倉から解放された。
京に戻ったと噂はある。
しかし、真実は行方不明。
どこへ行ってしまったのだろうか?
きっと義経と再会を約束した場所へと……。

一方義経31歳は、それから3年後に、つまり1189年4月30日に、奥州衣川で奇襲に合い、自ら命を絶ったとされている。

6月13日には、美酒に浸けられた義経の首が鎌倉の頼朝のもとに届けられた。そして実検がなされた。
だが、それは義経の首ではなかったのだ。

静御前と義経は再会を果たし、どこかの地で、穏やかに暮らしていた……と、そう信じたい。

いずれにしても【静】という漢字、中身は決して穏やかなものではないのだ。


追記
このヒーローとヒロイン、この物語があります。ご参考に。
http://novelist.jp/40030.html